お風呂からあがったは、さっきヒゲジジイの書斎に向かったわ。
 あの野郎……私の可愛いに手ぇ出したりしたら今度こそぶち殺してやるッ……。

「メイド長、何を考えているんですか?」

 私が少し悩んでいたのを見たんでしょうね。最近入ってきた後輩のメイドが突然尋ねてきた。この子はなかなか気が付いて根性もあるから結構お気に入りなの。

がヒゲジジイの所に行ったものだから心配しちゃって。ほら……万が一ってことを考えたら武器は必要でしょう?」
「まあ、ちゃんが!?」

 私が事情を話すとその子は驚き、うーんと呻った。

「武器ですかあ。包丁で殺っちゃったら返り血が汚らわしいですからねえ」
「あら、貴女本当に気が付くわね」

 彼女の気遣いを嬉しく思う。そうよ、私のこの純粋無垢なフェイスが変態親父の血で汚れるなんてあってはならないわ。
 そうこう私が思っているうちに、彼女は何かを思いついたのかポンと手を叩いた。

「メイド長、ここはこれを――……」



09.ノイシュタット滞在パワフルな腹黒は武器を選ばない





 湿った髪の水分を柔らかいタオルで吸い取りながら、はヒューゴの書斎へと向かっていた。
 オベロン社製の小型乾燥機のドライヤーもあったのだが、自然乾燥派のは一切使わなかった。それを目撃したマリアンから最後まで乾かすように注意を受けたのだが、今更ドライヤーを使うのも面倒で結局そのままにしている。
 それにしてもヒューゴからの用とは一体何なのだろう、とは思う。リオンも先に一人で任務に行ってしまったということは、パートナーとしての用事ではないのだろう。……変な用でない事を祈る。
 そう願いながら、はノック無しにヒューゴの書斎へと入った。
「用事って何?」
「お前は唐突すぎる」
 入ると同時にそう言ったに対し、呆れながらヒューゴは言った。しかしヒューゴはの姿を見て、「ほう」と感心したような声を出す。
「前もって準備してくるとは、お前もなかなかやるな」
「何の話?」
「抱かれに来たのだろう?」
「違うから! ものっすごい勘違いだからソレ!!」
 腹黒メイドと同じ思考回路らしい。マリアンとヒューゴの思考回路がおかしいのか、自分がおかしいのかは思い悩む。――いや、私は間違ってない。
「ちッ。そうだと思ったのに」
「舌打ちすんなよ小声で言っても聞こえてるから」
 はため息を吐いた。
 そしてヒューゴの机にドカッと座る。こんなことが出来るのはくらいだろう。いや、マリアンもやりかねない。
「んで、用って何なの?」
「ああ」
 ふう、とヒューゴはため息を吐く。表情を見る限り、あまり良い話ではないらしい。言いかけては、止め、言いかけては、止め。そんなことを繰り返しているからには、相当言いたくないのだろう。も聞きたくなかった。
「……ノイシュタットへ、滞在任務だ。期間は一年間」
「……は?」
 は自身の耳を疑う。寧ろヒューゴの口を疑った。
「も、もう一度言ってくれる?」
……私も辛い。しかし王の命令だ。幼児化されて駄々をこねられると、さすがの私も命が危うい。私が死んで一生お前と会えなくなるくらいなら、一年間会えなくなる方を選ぶ」
 寧ろ死んでくれ。
 は心の中だけでそう思う。口に出してしまっては凹まれて後々面倒だった。意外にナイーブなのである、この父親は。しかし一年間もノイシュタットに滞在にするなど、王はよっぽど自分を客員剣士にさせたいのだろうな、と思った。つまりは、客員剣士でないはセインガルド強制追放なのだろう。
 鬼である。
「で、でも……私、ノイシュタットで一人で一年間も過ごせる自信はないよ? 一回も行ったことないし、何したらいいかもわかんないし……不安だわ」
 行かなくていいものならば、行きたくはない。そんな願いを込めて、は「不安」というキーワードを使ってヒューゴに言った。すると、ヒューゴはいきなり震えだして机をダンッと叩いた。
「わかっている、わかっているんだ! 一人では心細いだろうし本当なら私もついて行きたい! 私とのことなんて全く知らない街へと行って、迷うことなく甘い生活の日々を過ごし毎晩ウッハウッハとかそんな考えは全くなく! あくまで乙女に負けんこの恋する者だけに与えられるトキメキという恋心を貫き通したいところだが……!」
「嘘吐け!! 明らかに絶対にウッハウッハ狙ってるだろお前! 腐女子にも勝るその妄想なんて貫き通さなくていいわ!!」
 話があらぬ方向へ飛んでいってしまった。いくらヒューゴの思考回路がおかしいとはいえ、こうも発展するとは思わなかったことを悔やむ。ヒューゴは疲れたように息を吐いて椅子に座りなおした。歳なのに無理をするなと言いたい。
「まあ、心配しなくて良い。ノイシュタットにはオベロン社ノイシュタット支部の責任者……レンブラントの娘がいる。そいつが色々面倒を見てくれるだろう。任務もそいつから言われるはずだ」
 レンブラントの娘、と聞いては想像してしまう。
 ホヒーホヒーと鳴きつつ芝刈り機で草刈ったりその他雑用をこなすレンブラントの女ヴァージョンの姿が、脳裏に精密に描かれる。
 ……そんな人間嫌だ。
「そいつ……って言ってるけど、名前は何て言うのよ?」
「イレーヌ・レンブラント。……、気をつけろ。奴は真っ黒だ」
 それは肌の色でも髪の色でもなく腹の中の色なのだろう。そんな人間のもとに行くのを考えると、は胃が痛くなるのを感じた。そのうち自分の腹が黒くなってしまいそうな気がする。
「えー……レベルで言うと、マリアンよりも?」
「いい勝負なのではないか。更にその上にお嬢様ときてるものだから性質が悪い」
「私無事に帰ってこれるかな」
 ヒューゴの説明にはさすがに自分の身の危険を感じた。今まで戦という戦を乗り越えてきたというのに、これから起こることだけは恐怖の戦慄を覚えた。
 立ち上がり、の傍にいつの間にかいるヒューゴに尋ねる。
「それで、いつ出発?」
「ああ、今日」
「早ッ!」
 やはりセインガルド王はを追放したいらしい。
「港に行けばすぐに出港できる状態だ。本当に私も付いて行きたい……。しかし、ファンの目から逃れるのが何より難しく」
「いや憑いてこなくていいから! ファンがいるのもわかったから! 気持ちは充分わかったから迫るな!!」
 机の上に座るの肩を掴み、どんどんと近づいてくるヒューゴ。接吻など必要ない、今の自分は体力全快なのだ。というかヒューゴの身体を借りていることを自覚しているのかこの親父。ごめんヒューゴさん、早速貴方の身体で父は失礼を働いています。等と心の中でツッコミまくる
 それもこれも、そんな事を考えている間にも接近してくるヒューゴのせいだった。
「あ、こら腰に手を添えてんじゃないわよッ……! あーもう無理! 助けてマリア―――ン!!!」
 バタァァァン!!
 来んの早。
 ずっと扉の外で待機をしているのかと思うくらい早い登場をした腹黒メイドマリアンは黒い微笑みをさすがの私も命が危うい。その片手が持っているものは――まな板。あれに赤い血痕がつくことになるのだろうか。
! 大丈夫!? ……ふふふ、愚問だったらしいわね。覚悟せぇや、ロリコンヒゲジジイ……」
 まな板を割らんばかりの強さで掴むマリアン。ミシッミシッと苦しい音をまな板が出しているのは幻聴だと思いたい。
「ふっ、来たな。黒電波を公共の場で流すんじゃない。空気が汚染される」
 毒電波のお前が言うな。
 ヒューゴはを庇うようにして、自身の身体の後ろへと隠した。庇うな。隠すな。
 はそう思ったが、この雰囲気の中では口はなかなか開けない。なんせ電波が飛びまくっているからだ。
「空気が汚染されるのはテメェの毒電波のせいよ! いい加減、自分が歩く公害だと気づいたらどうでしょうかヒューゴ様」
「ハッ、今更お前が敬語を使おうとも虫唾が走るだけだから止めてくれないか。お前のような野蛮な女はもっとガサツな言葉がお似合いだ」
「じゃあお言葉に甘えて……とっとと死にさらせやクソメガネ……」
 マリアン本性出しすぎです。そんな事を思いつつも、はこの二人が作り出すカオスな空間に耐えるしかない。早く脱出する為には――と、は頭を働かす。
「ごめん、ヒューゴさん! 私好きな人ができたの!!」
「何!?」
 のその場限りの大嘘にヒューゴは過剰反応し、隙を一瞬見せた。その一瞬の隙をマリアンが見逃すはずもなく、ヒューゴはもれなくまな板の餌食となる。
 ――ああ、マリアンって殴る時も微笑みを浮かべてるんだ……。
 新たな真実を知ったが、それは恐怖にしかならなかった。
「うふふ。相手に隙を見せるなんざ、馬鹿としか言いようがないわ。ところで、今の話は嘘でしょうね?」
「はい、嘘です」
 脅し半分で尋ねられ、は勢いよく首を縦に振った。そんなを見て「そうよね」と満足そうに頷き、マリアンはポケットから布巾を取り出してまな板の血痕を拭う。
「マリアン、私ね……セインガルド王の命令で、ノイシュタットに一年間も滞在することになったの。もう、今日出発らしいわ」
 マリアンの布巾を持つ手が止まった。顔は笑顔のままだ。その笑顔のまま「そう……」と呟く。
「セインガルド王を潰せばそんな腐った命令なんてやらなくていいのね! ちょっと出かけてくるわ」
「ストップ! ストォォーーップ!! 潰さない! 王潰さない!!」
 再びまな板を握り締め部屋を出て行こうとするマリアンの腰に縋りつき、は必死に懇願した。本当にセインガルド王を殺りかねない。
「だってが一年間もいなくなるなんて、私耐えられないわ! せっかく私のオアシスを見つけたのにッ……!」
「たった一年よ、マリアン! ヒューゴさんのコーヒーにトイレ拭きの雑巾絞り汁を三六五回絞ればいいだけなのよ! だから、ねッ! ほら、大丈夫だから!」
 マリアンに部屋の外まで引きずられる。何故あの幼児願望王のためにここまで頑張らないといけないのだろうか。はマリアンを必死に止めつつ、心の中で冷静にそんな事を思った。
 フォローの言葉が聞いたのか、マリアンは止まってくれた。が腰を離すと、マリアンはの方を見て笑顔を見せる。
「……そうね。そう考えればちょっとは落ち着いたわ……。 、私待ってるから……一年間ずっと待ってるから!」
 ギュッとまな板を抱きしめるマリアン。笑っているが無理しているのだろう。素晴らしい光景なのだろうが、いかんせんまな板に薄く残っている血痕が映える。
「ありがと、マリアン。エミリオは遅くなるんだっけ?」
「ええ、そうなのよ。夕方までは帰ってこれないらしいわ。レンブラント爺も出かけちゃったし……他のメイドに言えば余計な混乱を招いてしまうわね。だから見送りは私が玄関までしかできないけれど」
 充分である。
 この腹黒メイドが外で問題起こし巻き込まれることを考えるとは頭が痛くなる。

 すぐに出発する事をがマリアンに伝えると、マリアンはすぐに簡単に荷物をまとめてくれて玄関先まで見送ってくれた。まな板を胸に。屋敷から出て、は振り返って屋敷を仰ぎ見た。
 ――エミリオに挨拶ができないのが残念だけど。
 そんな想いが心に残る。一年後、戻ってきた時には怒られるんだろうな、と思ったら笑みが漏れた。シャルティエも尋常ではない電波を飛ばしてくるはずだ。
! 気をつけてお行きなさいね!」
「はーい!」
 わざわざマリアンが玄関の外まで出てきたと思ったら、手を振ってそう言った。それに笑顔で手を振り返し、は港の方へと向かう。
 ノイシュタットにはマリアンより性質の悪い腹黒がいるのだ。心して挑まねばならない。



「あ。もしかして様ですか?」
 市場で賑わう港に着き、船場に行くとオベロン社の馬鹿デカイ船がそこにはあった。そこの船員がを見つけ、声をかけてくれる。はコクリと頷いた。
「ええ。……あの、別に様をつける程の身分でもないし、敬語もなくていいよ?」
「そうですか! ……ああ、えっと、わかったよ! ヒューゴ様からきつく言われていたもんだからさ」
 何を言ったのだろう。は少し気にはなったが、敢えて聞かない。どうせくだらない事だろう。
「それじゃ、出発してもいいのかな?」
 船員に尋ねられ、が「うん」と頷こうとした矢先――。
―――――――ッッ!!!!!」
 来た、変態親父。
 大量の砂埃をその背後に舞わせ全速力でダッシュしてのもとへとやってきたのは、ヒューゴだった。船員たちが緊張するのが空気でわかる。
 ヒューゴは荒い息を吐きながら言う。
「はぁっ……はぁっ……良かった間に合って。に言っておきたいことがあって」
 ――間に合わなくて良かったよ、父さん。
 は心の中で静かにそう思いつつ、首を傾げた。
「言いたいことって?」
「愛しているよ、
「ブッ!!」
 ヒューゴはの頭をフワリと撫でて、の顎を指で掴み軽く上に持ち上げ、とてもとても愛しそうに額にキスをした。盛大に噴く周りの人間。
「あああッ!! 私のファーストキスinおでこが奪われたぁぁああ!!」
「何を言う。お前が幼い頃はよくやったものだぞ」
「あ、忘れてた! リトラー司令にも一回やられてた!」
「あいつ殺す……」
 が叫ぶとヒューゴは勝ち誇ったように笑みを浮かべた。そんなヒューゴを無視してが言うと、ヒューゴはただならぬ殺気を醸し出してそう言った。一度殺されておいて何を言うのだろう。
 まわりの人間たちは、顎が外れている人が多数。それもそうだろう。お堅いことで有名なオベロン社総帥があろうことかのような小さな少女にデコチューなどしたのだから、今夜は気になって眠れないところだろう。アーメン。
 ヒューゴはから目線を外し、船員たちの方に目を向けて言った。
「貴様ら、に手を出したら目玉はないと思え」
 その言葉を聞いて、ブンブンと頭を縦に振る船員たち。何の関係のない一般市民までつられて振っている始末。そんな船員の様子に満足したのか、ヒューゴは再びを見た。
「行ってくるといい、。一年後を楽しみにしている」
「私は何だか怖いわ」
 お前の変態度があがりそうで。はあ、と深いため息を吐きながらは船へと乗り込んだ。そんなの姿でさえ一瞬でも見逃すまい、とヒューゴはメガネを光らせる。
 船はゆっくりと港を出発した。
「今度は私と一緒に船に乗ってタイタニックをするぞ! 約束だ!」
「もうお前早く帰れよ!!」
 タイタニックって。鳥になれと言うのか。最後の最後まで意味不明な発言をするヒューゴに向かってはツッコんだ。

 離れていくダリルシェイドを見ていると、船員がに声をかける。
ちゃんって、ヒューゴ様とはどんな関係なんだ?」
 くると思った、この質問。余計なことをしてくれる、とは思った。
「ただの上司……だよ。ヒューゴさんが無意味な変態活動してるだけで」
「その割にはアツアツだったなあ」
 ヒュゥッと口笛を吹き、一人の船員が機嫌良さそうに言った。どこがアツアツに見えたのだろう。漫才に見えたのならわかるのだが。他の船員が「そういえば」と話を続けた。
「ヒューゴ様、確か独身だよな? これはちゃん将来貰われるんじゃね?」
「いやちょっと待て! 歳どんだけ離れてると思ってるのよ!?」
 その船員の言葉にはツッコんだ。軽く一回りどころか二回りは離れているはずだ。
「愛に歳は関係ないぜ☆」
「どっちにせよあの変態は犯罪だと思いますけど!」
 親指おっ立てて宣言する船員。その後は、やいのやいのヒューゴ様は鬼畜だの言葉攻めだの下ネタが飛び交う話題となった。何故自分はこんなにも弄られているんだろう。
 はそう思いつつ、ノイシュタットへの三日間の船旅を楽しむことにした。



「あぁん! もうちゃんとお別れなのか?! 嫌だあぁぁ!!」
「くっそぉぉお! 船沈めて一生をちゃんと共にしたら良かった!」
「困る! それすっごく困るから!!」
 ノイシュタットに船が着き、そろそろが船を降りるところで船員たちが次々に発狂しだした。中には非常に気がかりな発言もする奴もいたため、それには律儀にツッコむ

 この三日間の船旅は、にとってそれなりに充実していた。
 普段あまりやらせてもらえない事をさせてもらったのだった。料理、洗濯等家事全般。のあまりの効率の良さとプロレベルの技術に、船員たちは惚れ込んだようだった。
「でも本当に楽しかったよ。一年後も絶対に迎えにくるからな!」
「うん、ありがと。みんな元気でね!」
 船員の言葉にが笑顔で返すと、船員たちも笑った。男所帯も悪くはない。久々に遊撃隊を思い出して楽しかった。
 はそう思いつつ、手を振って船を降りた。

 船を降りた途端、賑わう港の人混みをまるでゴミのように蹴散らしてやってくる女性が一人こちらへと向かってきた。少し癖のある薄紫色の髪をなびかせ、マッハ並みの速さのその女性は、の前で立ち止まる。
 ――ああ、この人がイレーヌさんか……。
 見ただけで分かるって異常だ。
「貴女がちゃん!?」
「は、はい、そうですけど……。イレーヌさん、ですよね?」
 イレーヌと思われる女性は、を本人だと確認すると言うが早いかを千切れる程強く抱き締めた。
「ゴフッ!」
「なんて可愛らしいの! ヒューゴ様が可愛い可愛い言いやがるから、ほんのちょっぴり期待していたらこんなに可愛いなんて! 一年だけっていうのが辛いわ……」
 ――父さん、初っ端から私は気に入られてしまいました。
 ぎりぎりと肋骨が悲鳴をあげるなか、は父親を想った。
「イレー……ヌさッ……苦しッ……」
 肋骨が折れるどころか、もはや死んでしまう。イレーヌに気に入られたのはいいが、は来て早々生死をかけた戦いをすることになってしまっている。
「……あら。まあ! ごめんなさいね、ちゃん」
 が意識を手放そうとした瞬間、イレーヌはやっと気づいたようで放してくれた。呼吸もままならなかったは、酷く咳き込んだ。
「ゲホッ! ゴホッ! ……ふぅ。これから宜しくお願いしますね、イレーヌさん」
 とりあえず第一印象は大切だと思い、は笑顔でイレーヌに向かって言った。
 するとイレーヌは、
「ゲホッ!!」
 大量の血を吐いた。当然驚く。周囲の人間も驚いている。
 イレーヌが笑った。
「フッ……フフフフフ。よろしくね、ちゃん」
 ピンクオーラを全身から醸し出し、イレーヌはそう告げた。イレーヌの目は「狙った獲物は逃がさない」と物語っている。
 は笑った。いや、笑うことしかできなかった。

 ――私、生きて帰れますか?
 ――そうね。私も出来ることならば帰したくないわぁ♪

あとがき
マリアンは相手を殺るためなら手段を選ばず自分が向かう腹黒で、イレーヌは相手を殺るためなら手段を選ばず他人に向かわせる腹黒だといいと思います
腹黒にも色々種類があるんですよ!表現ができないだけでッ…!(駄目だ
次回はコングマンにエルロン兄妹を登場させる予定です
それでは、ここまで読んで下さった方有難う御座いました!
2004年代(最終改訂:2009/1/23)
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