約八十人の盗賊の捕獲は下手したら夕方まで長引くかも、っては言ってたけど、案外早く終わったもんだよね。早く終わったのも、あの盗賊の頭の悪さのおかげだろうけど。太陽の位置からして、昼前ぐらいだろうな。

『早く終わって良かったですね、坊ちゃん』
「長くなるよりかはな」

 そう言った坊ちゃんの顔は、に会ってから幾分か和らいでいた。そしての方も、地上軍にいた時よりも表情が随分明るい。
 そんな二人は、お互いに惹かれあっていて。
 坊ちゃんの言葉にためらうや、の言動に顔を赤くさせる坊ちゃん。

と坊ちゃんって、見ていて飽きませんよね!』
「「どういう意味だ(よ)!」」

 大勢の盗賊を引き連れて歩く姿は、ダリルシェイドの街では注目を浴びました。



06.幼児願望ジジイ行く末危うしセインガルド王国





 盗賊たちを王国の兵士に渡して、とリオンは王の間へと向かう。
「ああ……今から王様に会うのよね。緊張する」
 ふとが漏らした言葉に、リオンは意外そうな顔をした。
「お前でも緊張するんだな」
「乙女に向かって言う台詞じゃないよ、それ。こう見えても繊細なんだから」
が言う台詞じゃないよね』
 の台詞にシャルティエが鋭いツッコミを入れた。そしてリオンがフッと笑った。その笑みは、どこか憎たらしくて。
「ほ、本当なんだから! 心臓がバクバクいってるし、っていうか口から飛び出してきそうだし……」
「……どうやら本当らしいな」
『ですね』
 急に認めるものだから、は拍子抜けしてしまう。リオンの目線の先は、自分の手足。は首を傾げて疑問符を浮かべた。
「手と足が右左同時に出ているぞ」
「……」



「お待ちしておりました」
 王の間の扉の前にいる少し位が高そうな兵が、とリオンに向かって頭を下げた。も「あ、どうも」とお辞儀をする。隣にいるリオンはその様子を見てため息を吐いていた。
「王もお待ちです。どうぞ」
 そう言って、兵は後の扉を開けた。
 扉の先が見える。大理石の上に敷かれている赤絨毯は、王のところまで繋がっていた。王座の下には、七人の兵が二つに分かれて並んでいた。ダリルシェイドの新聞に載っていた七将軍だな、とは思う。
「失礼します」
 丁寧に頭を下げ、は歩き出す。その後ろにリオンがついてきた。その場にいる大勢の視線が突き刺さり、の心臓はいつになく高鳴った。
 王までの道が、とても長く思えた。そして、やっとの思いで王の前まで辿り着き、心拍数が下がらぬまま顔を王の方へと向けると同時に言葉を発した。
「お初にお目にかかり……」
 言葉を途中で切る。呆然としてしまった。将軍や大臣らも、思わず王を見る。
「お、王!」
 王は寝ていた。殺してやろうかと思った。
 大臣に呼び起こされ、王はビクッと体を一瞬跳ね上がらせながら目覚め、すぐ下にいるを見て目を瞬いた。そして、呟く。
「……余にも、ついに迎えが来たか……」
「何の迎えですか」
 は思わす突っ込んでしまう。すると王は目をカッと見開き、目を血走りさせを見た。あまりの迫力に、はたじろぐ。一国の王に対して突っ込みはまずかったか。このまま隣国あたりに亡命かな、などと考えていると、王が声を荒げて怒鳴った。
「お主は女神ではないのか!?」
と申します!!」
 亡命計画まで立てていた自分って一体……。と、は頭を抱えた。周りの人間もため息を吐いている。王はやっと理解したようで、「おお……!」と頷いた。
「お主がか! ヒューゴから聞いておるぞ。話を聞いてまるで女神のようだと思っておったが、本当に女神と間違ってしまうとわな! アシュレイの横にいると、アシュレイが霞んで見えるわい!」
 王様容赦ねえ。アシュレイと思われる青年は、顔を赤くしてゴホンッと咳払いをしていた。
「ヒューゴさんが言ったことは、あまり信じないで下さいね。今回の任務だって、どれほど苦労したことか……」
 のその言葉に、王は疑問符を浮かべた。
「任務? 何か頼んでいたか?」
 その言葉に、は呆然とした。リオンも同じように。
「え? あの、ヒューゴさんから聞いたんですけど、八十人の盗賊を生け捕りにするって……」
 の発言に、周囲の人間がざわめく。大臣は顔を真っ青にしながら、口を開いた。
「王……あの事では。もともと七将軍に任せようとしていたものを、王がご冗談でヒューゴ氏に言ったものでは……」
 大臣の話によると。



王「お主の話だと、その娘はまるで女神のようだな!」
ヒューゴ「もはや女神だとお思い下さい。そして、決して手を出されないように。私だけの女神ですから」
大臣(私物化……)
王「しかし、それなら最近、森の方に住み着いている盗賊をも生け捕りにできそうだな」
ヒューゴ「ほう? なんならやってみましょうか?」
王「ハッハッハッ! 七将軍に頼むつもりだったが、やれるものならやってみせよ!」



 という流れだったようだ。
「ヒューゴのやつめ。いつになくノリが良いと思えば、本気だったとは……侮れん」
 冗談でンなコト言うお前自体侮れん。周りの人間は心の中でそう突っ込みを入れた。
 は盛大なため息を吐いた。
「私の苦労は一体何だったんだと……」
 つまりは、別にやらなくても良い事をわざわざやってしまったわけだ。そう思うと、屋敷で犬と遊んでおけば良かったとも思えてくる。
 そんなの様子に気付いたのか、王は笑顔で言う。
「よし! 七将軍を減給することにして、お前たちにその分を報酬としてやろうではないか!」
「は!?」
 王のその発言に、七将軍たちは思わず叫んだ。
 その叫びの中に「冗談じゃねーぞオイ。いくら大きい任務を少年少女二人が全部やってしまったからといって、自分たちを減給て。一国の王なら普通に出せ」という思いが含まれているのがわかった。
「ん? なんだお前たち。不服なのか?」
 当たり前です。一斉に頷く七将軍。
「仕方ない……。よし、アシュレイ。と戦って勝ったのなら、七将軍の減給の件を却下しよう」
「突拍子もなくドエライこと言い出しますね王様」
 冷や汗を出し、は突っ込んだ。
「勝たねばお主の賞金も出んぞ」
 もうこの人、鬼。は心の中で涙を流しながら、仕方なくレイピアを抜いた。しかし、アシュレイは戸惑うようにしどろもどろしていた。そんなアシュレイに痺れを切らしたのか、王はすぅっと息を吸う。
「やーだッ! アシュレイが戦わないと、王様拗ねちゃう」
 その場にいる人間の顔が青くなった。そして青くなりつつ、アシュレイの周りにいる人間は急かす。
「そ、そうだアシュレイ! 迷う事はない! 戦った方がいい!」
「とりあえず剣を抜け! そしてとりあえず戦え!」
 冷や汗を流しながらアシュレイに言う人間に対し、は疑問符を浮かべた。考えても答えは出なかったので、隣にいるリオンに尋ねた。
「ねえ、リオン。……これはどういう状況?」
 が小さな声でリオンに尋ねると、リオンもまた小さな声で答えてくれる。
「王は度々ああして、幼児化してしまう。いっそ身体も幼児化してしまえばいいのに……運命とは皮肉なものだな。そして一年くらい前に事件は起こったんだ。アシュレイには兄がいて、名はフィンレイと言った。フィンレイは鬼神とも呼ばれ、このセインガルドの大将軍で子供のいない王の跡を後々継ぐ予定だった」
 だが、とリオンは続ける。
「発言力の強いフィンレイを、ヒューゴは邪魔だと判断したんだろう。悲劇は始まった。ヒューゴは巧みな話術で、オベロン社高額製品を十倍の値段で王に売りつけたんだ。後先考えずに買ってしまうとは何事だ、とフィンレイは鬼神のごとく怒った。元々ドSだったフィンレイは、セインガルド王をここぞとばかりに虐げた。すると王もさすがにキレたのか……あのように幼児化して「死刑にしちゃうんだから! フィンレイなんて嫌いだいッ」と言って本当にフィンレイを死刑にしてしまった……ッ! 全て、ヒューゴの企み通りとなったんだ。それから皆は、王が幼児化した時に逆らわないでおこうと心に誓ったんだ」
「あの、どこから突っ込んでいいのかわからないんだけど。……間違いなくセインガルドは潰れるわね」
 リオンの説明を聞いて、は哀れみの目をセインガルド王に静かに向けた。そしてこの国の行く末を心配する。そして自分を心配する。
 ――とんでもない国に足を踏み入れてしまったのね、私……。
 もはや地獄であった。
 事情もわかったことだし、は一つ息を吐いてレイピアを握り締めアシュレイの方へ振り向くと、
「うおあああああああ!!」
「えええええええええ!?」
 アシュレイは既にこちらに向かって剣を振り上げていた。人道も愛もへったくれもない。むしろ芸術ともいえる外道な先制攻撃だった。こいつ本当に戦士かよ。
 は持ち前の反射神経で、レイピアを横に構えてアシュレイの攻撃を頭上で受け止める。アシュレイの目は血走っていた。
「僕は死ねない僕は死ねない僕は死ねない僕は死ねない!!!」
「ちょ、怖いんですけどこの人!!」
 兄の二の舞になりたくないのはわかるが、もう少し優しくしてもらいたい。は青ざめつつも心の中でそう思った。
 レイピアを折られる前にはアシュレイと距離をとる。いや、折られることがなくても距離をとりたい。
 すると後ろの方からリオンが「頑張れッ……」などと健闘を祈るような、しかし自分は一切関わりませんという放置宣言のような声が聞こえた。切ない。
 しかし掠れた色気声のリオンの応援の声は、を元気づけるのには十分だった。
「かかってらっしゃい、アシュレイ!」
「僕は死ねないぃぃぃ!!」
 がレイピアを構えて声高々にそう言い放つと、アシュレイは声を荒げながらに突進してきた。その光景はまさしく闘牛士と闘牛。
 再び刃がぶつかる。攻撃を弾きながら、はアシュレイの戦い方を見る。
 基本に従った、堅実な剣術。癖がないな、とは思った。太刀筋も悪くないし、なかなか反射神経もいい。
 だがはすぐに弱点を見つけ、そこを突く。
「ッ!?」
 出されたアシュレイの突きを思い切り上からレイピアで叩いた。すると突然のことに、アシュレイは身体をほんの少し前傾させてしまう。その隙をが見逃すはずもなく……アシュレイの後ろ首には流れるようにのレイピアが添えられた。
「勝負あった!」
 王が意気揚々とそう言い放った。
 はレイピアを鞘に戻して、腕を組んでアシュレイに言う。
「基がしっかりしてるから、悪くないわ。でも癖がなさ過ぎて攻撃が読みやすい。そんでもって何よりも……硬すぎるわね。肩から剣先にかけて力入れすぎ。必要以上に柄を強く握りすぎ。だから剣を叩かれたら前傾しちゃったのよ」
「うッ……」
 ボロカスに弱点を次々に指摘されたアシュレイは、全て図星だったのか小さく呻った。周りの者たちは呆気にとられていた。こんな小さな少女が本当にアシュレイに勝ってしまった事。そしてそれどころか、的確にアドバイスまでしている事に。
が天地戦争時代にまとめていた遊撃隊は、実力者で自信過剰の集まりでしたからね。そんな隊員たちを切り捨ててはアドバイスをしてたんです』
「なるほどな」
 シャルティエがリオンに向かって説明し、リオンはそれに納得したように頷いた。
 王は感心したように声を上げる。
「なんと見事な戦いっぷりだろうか! 更には弱点も指摘するとは……!」
「いえ、そんなに褒められることでもないですよ」
 は王に向き直り、少し俯き苦笑しながら謙遜した。
 天地戦争時代、とシャルティエは言うがにとってみればつい最近までしていたこと。当然のこととしてやっていたことだし、褒められるようなことでもないとは思う。
 しかしその謙虚な姿が好印象だったのか、王は瞳を輝かせながら言った。
を将軍として城に迎える!!」
 唐突すぎやしないか、この王。普通ならもう少し低い階級で入兵し、そこから経歴を積んで最終的には将軍へ……という過程を全て潰しぶっ飛ばした王。まわりの人間も王の唐突な判断には焦っている。
「た、確かには素晴らしい人材ですが……。いきなり、というものは彼女にとっても辛いのでは……」
 大臣が恐る恐る、そう意見した。そうよ、と大臣に続いては言う。
「大体よく考えてよ。私はまだ思春期真っ最中の十三歳の華の乙女なのよ? リオンは別として、まだまだ子供な私が城に仕えるなんて。セインガルドの王様はそんな私の気持ちも読み取れない程頭悪いのかしら?」
「なッ……」
 辛口発言のに、王は唇を震わせた。そして目も潤んでしまっている。これはまさか幼児化の兆しでは……と周りの人間は震えた。自身も少し言い過ぎた、と今頃思う。しかし、既に時遅し。
 王の顔は完全に幼児のように歪み、唇を震わせながら言った。
「ごめんなさいッ……」
 謝りよった。
 予想外の成り行きには滑りそうになる。まさか幼児の王が謝るなんて……と周囲の人間は驚き、を凝視した。そしてにはもれなく『幼児願望ジジイを唯一手懐けられた少女』の称号を貰うはめになる。
 大臣は言った。
「やはりは我が城に必要です!! 城に迎えましょう!」
「さっきと言ってること逆なんだけど!?」
 熱くなる大臣には盛大に突っ込んだ。
「ほらみろ!  を城に迎えたいと思うのは余だけじゃないんだ! へへーん」
「む、むかつくッ……!」
 クソガキのように威張る王にキレそうになる
 「断固拒否します!」とが叫ぶと、さすがに王もそんなを無理強いすることが出来なかったのか「仕方あるまい」と、折れてくれた。
「せめてリオンと同じ待遇、客員剣士になってもらうぞ!」
「何の話聞いてんですか!? 私は城に仕えるのが嫌っつったんですけど!!」
 折れたと見せかけて折れないジジイ。いい加減も疲れてきて、ため息を吐いた。
「リオンのパートナーとしては頑張らせて頂きますから、それで問題ないでしょ? 今まで他の事で頑張ってきたから、少しゆっくりしたいんです」
「むぅ……ならば一年後だ! 一年後にお主を客員剣士として迎える! これだけは譲らんぞ!」
 王の言葉に、は考える。本当はもうこれからの人生フリーターのように生きていきたかった。
 でもそれは難しいことなのだろう。何故だかわからないが、自分はどうも上の役職に就いてしまう。
 それなら、一年ゆっくりできることだし条件を飲んでもいいか――。
「……わかりました」
 が承諾すると、王の間は「おおお……!」と歓声があがった。やはり王を手懐ける人物がどうしても一人は欲しいのだろう。気持ちはわからなくもないが、の命は常に崖っぷちになるのである。
 王は満足そうな顔をして笑った。
「はっはっは! 皆も喜んでいるようだ! 今日は盗賊たちを捕らえたことだし、もう疲れただろう。自宅に戻ってゆっくり休養をとると良い!」
 急にご機嫌になる王。寧ろ盗賊の一件より、王とのいざこざの方が疲れたとは率直に思った。さすがに口には出さないが。
『王様とのやり取りの方が疲れたよね』
 シャルティエが代わりに言ってくれた。リオンも同じ気持ちだったようで、ゆっくりと頷く。珍しく空気の読めたシャルティエには心の中で拍手を送った。
「……じゃあ、今日はもうお先に失礼させて頂きますね」
「失礼します」
「ああ、また来るといい!  よ、リオンのパートナーとして全力を尽くすのだぞ!」
「わかりましたよ」
 何故わざわざ王がそんな事を言ったのか。言われた時は特に何も思わずため息と一緒に返事をしたのだが、後になってその「全力を尽くす」という意味がよくわかることになる。
 だがそれは、もう少し先の話――。



「何故将軍の件を断ったんだ?」
 城から屋敷に戻る道中、会話の途中でリオンがいきなり尋ねてきた。恐らくの考えが理解できなかったのだろう。確かにこんなに美味しい話はない。
 人で賑わう城下町を歩きながら、は「だって……」と言って続けた。
「将軍っていったら当然部下もつくわけじゃない。でもそれって同時に責任も負わされるのよね。部下がやらかした問題は、全部その上の人間にまわってくるんだもの」
は十歳でいきなりその辛さを知っちゃったからね。そりゃ休みたくのもわかるよ』
 シャルティエの言葉には頷く。自分がまとめていた隊員たちは皆癖のある人間ばかりで。目を離すとすぐに他の部隊にちょっかいをかけてしまう。
 その隊がシャルティエや、ソーディアンチームの隊ならばお咎めも少ないのだが他の人間となると難しい話になった。なんせ自分はミクトランの娘というレッテルを貼られているわけだし、ちょっと油断すればいつでも隙を突かれた。
「……お前は相当苦労人なんだな」
 リオンが苦笑する。その表情は少し新鮮に思えた。
 ――萌える。あ、いや違った。
「僕は自分が情けない。今まで自分より不幸な奴なんていないと思っていた。だが、は僕よりよっぽど不幸だ」
「それ褒めてんの? 貶してんの!?」
 不幸宣言を言い渡されたはリオンに真意を聞くが、リオンは「褒めているに決まってるだろう」と答える。本当かそれ。
『えー、でも坊ちゃん。はそれなりに忙しいわりに幸せでしたよ? なんたって僕と三年間同室だったんですから。そりゃ立つわ立つわフラグの数々! そして僕との恋愛イベント! あの乳繰り合った日を忘れないよ……!』
「乳繰り合っただと!? い、一体何をしたんだ!?」
「何もしてないから! くすぐり合った日があったぐらいだから!」
 シャルティエの妄言にリオンは驚愕の表情を浮かべながらも少し顔が赤い。何を想像しやがった。そう思いつつもが否定するとリオンは少し安心したように息を吐く。
「良かった……シャルと乳繰り合うなんて、それこそ不幸だからな」
『酷い坊ちゃん!!』
 確かに。はそう言って笑った。シャルティエは相変わらずまだブーブー鳴いてるが、リオンが適当に相手をしてやっている。
 ふと、は街の4人の女性グループに目がいった。というのも、その女性グループがの方をちらちらと見ていたからだ。悪趣味かな、とは思いつつも気になったのでは聞き耳を立てた。
「ねえ、リオン様の隣にいるあの子……」
「ええ、ほんとあり得ないわね」
 そんな会話が聞こえる。
 ――ああ、ひがみか。
 天地戦争時代ですっかり慣れてはいるものの、やはり気分はあまり良くはならない。はため息を吐いた。しかし、彼女たちの会話はまだ続いた。
「あの子……なんて可愛いのかしら!」
 ズルッ
 自分の予想とは全く違った言葉だった為、は思わずこけてしまった。女性グループは人目も憚らず盛り上がる。
「リオン様も女顔で可愛いけど、あの子もイイわねぇ!」
「食べたいッ! リオン様もあの子も食べたい!」
「どこに住んでるのかしらぁ! こっそりあとをつけてみようかな♪」
 冗談なのか? いや寧ろ冗談であって欲しい。はそう思ったが、奴らの目は獲物を狙うハンターの目。冗談でなさそうな気がしてきた。早急に帰ろうと思い、はリオンの腕を掴んだ。
「なッ……」
 するとリオンの顔は少し赤く染まった。可愛いけど、照れてる場合じゃないぞ少年よ。
「リオン、早く帰りましょ。……色々と身の危険を感じるから」
「は? ……ああ、わかった」
 の言葉を一瞬不審に思ったのだろう。リオンは顔を顰めたが――先程の女性グループの存在を見て納得したように大人しく従った。
 あんな女の人もいるのね、とが言うとリオンとシャルティエはそれに答える。

 ――。……あいつらは男だぞ。
 ――…………マジで?

あとがき
ファイルサイズ見てて思ったんですけど、修正前と修正後じゃあサイズが倍以上違うんですよ。
あれ、同じプロットなのに何故…とか思って修正前のを見直したら、ほとんど台詞だけだったりネ!(^q^)
今回は王様メインで…まあタイトルですし!なかなか扱い辛かったりします。
次はルーティに会っちゃいます
それでは、ここまで読んで下さった方有難う御座いました!
2004年代(最終改訂:2009/1/11)
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