「兄貴。何、その子」

 任務から帰ってきた兄貴の部隊は、三十人から五人になってて。
 それにも驚いたけど、一番驚いたのが兄貴の腕に抱かれてた女の子ね。

「実は――……」

 上層部の人間は、兄貴の説明を聞いて固まったわ。
 私もダイクロフト真下で強力な晶術反応があったのはキャッチしてたけど、まさかその女の子が発生させたなーんてって感じ。予想もしてなかったわ。

 だから人生って面白いんだけど。



傷つけられた心





「――で、少女の治療はアトワイトとハロルドに任せるとして」
 青髪の青年――ディムロス・ティンバーは、少女を連れていった二人を見送って、話を切り出した。
「……ハロルドさんに任せて大丈夫なんでしょうか」
「それを言ったら終わりですよ、シャルティエ」
 不安そうに呟いた銀髪の青年――ピエール・ド・シャルティエに、冷静に突っ込みを入れたのはイクティノス・マイナード。
 その会話を聞いて呑気に笑っている老人がラヴィル・クレメンテ。苦笑しているのが地上軍総司令官のメルクリウス・リトラーだ。
「あの少女を今後どうするか――。問題はこれだね」
 カーレルのその言葉に、上層部の人間は一斉に頷いた。
「人間かさえわからないんじゃ、話にならないな」
「モンスターだとしたら、殺せばいい話です。人間ということを前提に話しましょう」
 この会議が無駄、といった感じのディムロスの発言に、イクティノスは冷たく言った。
 熱いディムロスと冷たいイクティノス。その間に挟まれているシャルティエが心底可哀相だな、とリトラーは思った。
「カーレル君。ダイクロフトから降りてきた時の少女の様子を、もう少し詳しく説明してくれないか」
「そうですね……。地面に叩きつけられると思った瞬間、彼女の身体が宙に浮いたんです。初めは私もモンスターかと思い、しばらく様子を見ていたんですけど息も切らしているようだったし人間かと思い、保護しようと思い兵士たちで少女を囲みました。少女は酷く緊張した様子で、上手く喋ることができなかったみたいで。喋れないことにより、モンスターだと勝手に判断した兵士が一斉に攻撃を仕掛けまして。そして後は……先程お伝えした通りです」
「あの娘に敵意は無かったわけじゃのう」
「寧ろ怯えてましたね」
 リトラーに問われたカーレルはそれについて詳しく述べ、クレメンテの言葉に頷いた。
 ふとシャルティエの方に目をやると、彼は何か考えているようだったのでカーレルは思わず聞いた。
「シャルティエ、何を考えているんだい?」
「いや、あの……。あの子って、十歳くらいでしたよね。逆算したら、あの話と一致しないかなって。遊撃部隊長のヴァンクが言ってた……」
 そこまで聞き、その場にいた人間全員が目を見開いた。
 リトラーが、呟く。
「あの少女が……フィアル=と、ミクトランの娘だと……」
「確かに、計算が合いますね」
 イクティノスが頷くと、他の者を続くように頷いた。
「だが……そうだとしたら、何故この地上に? スパイとしてか?」
「それはどうだろうね、ディムロス。これまでに投降してきた天上兵の話では、ミクトランの娘は一つの部屋に幽閉され、ミクトランの溺愛の的となっていたそうじゃないか。そんな子がスパイとしてやってくるとは考えにくい」
 ディムロスの言葉に対し、カーレルが発言する。
 それを聞いたクレメンテは、「そこら辺は本人に聞くしかないようじゃの」と呟いた。
「……もし、本当にフィアルの子供だとしたら……彼女に、フィアルのことを話すべきですか?」
 シャルティエの問いに、皆は押し黙る。
 リトラーが、重々しく口を開いた。
「あの子がまだ知らないのならば、今はまだ教えないほうがいい。彼女が大人になって、知りたいと言った時に教えても遅くはないだろう」
 そのリトラーの言葉に、誰もが俯いた。
 ふと、イクティノスは思いついたようにノート型コンピューターを取り出し、スイッチを入れて操作をし始めた。
 一体何かと思い、皆はイクティノスを見つめる。

 そのイクティノスの口から出た名前。
 シャルティエは首を傾げた。
「誰ですか?」
「そのミクトランの娘の名前ですよ。あの少女が自分をだと名乗ったら、確信してもいいんじゃないでしょうか。もちろん、偽者という可能性も充分考えられますが」
「とりあえず、彼女の回復を待たないと何も始まらないみたいだな」
 イクティノスの説明を聞き、カーレルはため息を吐いた。

 一段落ついたところで、ハロルドが疲れた様子で会議室へと入ってきた。
「ハロルド、どうだい? あの子の様子は」
「どーもこーもないわよ。血液検査したら、免疫が全くないんだから。よっぽど無菌なところで育ったみたいだわよ。ってことでミクトランの娘決定でいいんじゃない?」
「……聞いていたのか」
 カーレルの問いにハロルドは答え、その答えにディムロスが項垂れる。
 ハロルドは胸を張り、「盗聴器でねー」と答えたが、どこまで本当なのか全くわからない。
「それで、今はどんな状態なんですか?」
 シャルティエが聞くと、ハロルドはため息を吐いた。
「正味死んでもおかしくなかったけど、アトワイトの治療と私の薬品で一命を取り留めたって感じ?」
 アトワイトの治療はともかく、ハロルドの薬品って。
 その場にいた人間は、嫌な胸騒ぎを感じる。
 それを悟ったのか、ハロルドは呆れ返った様子で言った。
「薬品っつっても、その免疫力を高めるやつと、体力を増進させるやつと、筋肉がつきやすくなるやつね。筋肉もぜーんぜんだったから、ちょっとつけた方がいいっしょ」
「いつぐらいに目を覚ますんだ?」
「それはあんたの恋人に聞いて」
 ディムロスに尋ねられたハロルドは、サラッとそう言いのけた。ディムロスはハロルドを睨み、次にカーレルを見る。
「……カーレル」
「私は君の恋人じゃないよ、ディムロス」
「わかっている! 頼むから、まだ付き合ってもいないのにそういう方向へ持っていこうとするコイツを兄なら野放しにしないでくれ」
 ディムロスの言葉に、カーレルは意外そうに「へえ」と声を上げた。
 実に、楽しそうに。
「まだ付き合ってなかったんだ?」
「え、意外です……。僕は、もうとっくに付き合ってるものだと」
「予想外ですね。二人が一緒にいる情報を見ていると、付き合っていてもおかしくはないと」
「さっさとくっついちゃいなさいよー♪ グフフッ」
「アトワイトはワシの娘みたいなもんじゃ。優しくしてやってくれよ」
「戦争が終わったら結婚式だな」
 カーレル、シャルティエ、イクティノス、ハロルド、クレメンテ、リトラーにはやし立てられて、ディムロスはもう泣きたくなる。
 完全に会議室で盛り上がる内容ではない。
 それを理由として話を切り替えようと、ディムロスは勢いよく机を叩いた。
「今はそんな話をしている場合じゃ――!」
 大声で怒鳴った瞬間、アトワイトが会議室へと入ってきた。
「ディムロス」
「何だ?」
 ころりと態度を変え、顔は笑顔。
 そんなディムロスの変わりように、他の人間は思わず噴出した。
 それに気づいたディムロスは、ますます真っ赤になる。
 アトワイトは気づいてるのか気づいていないのか、笑顔でディムロスに言った。
「私たちって恋仲じゃなかったの? 私、てっきりそうだと思ってた」
 どうやら外まで聞こえていたらしい。
「あッ、アトワイトッ……! そ、そのだな、まだ期間も短いし、内密に、と……!」
「いいじゃない、皆知っちゃってるみたいなんだし」
 アトワイトの言葉にしどろもどろになりつつディムロスは答え、それを見たアトワイトは尚も笑った。
 ディムロスって意外と純情なんだな。
 上層部の人間は、心の中でそう呟いた。
「あ、そういえば……あの子のことなんだけれど」
 アトワイトのその一言で、真剣な顔つきになる上層部の人間。切り替えが早い。
「ハロルドから聞いたかもしれないけれど、免疫力が全くなくて、そのせいで一気に病原体が体を侵食していたの。ハロルドが投与してくれた薬品のおかげで、今は落ち着いているわ」
「いつぐらいに目を覚ましそうだ?」
「早くて明日の朝。遅くて明日の晩ってところね」
 ディムロスの問いに答えたのは、アトワイトではなくハロルド。
 「それはあんたの恋人に聞いて」と言っていた人物から答えが得られるとは思っていなかったらしく、そして嵌められた事に気づいて再び顔を赤くしながらハロルドを睨んだ。おかまいなし、といった感じでハロルドは口笛を吹いていたが。
「ああそうだわ。あの子、晶術が使えるわよ」
 ハロルドが思い出したように言い、周りの人間は目を丸くさせた。
「晶術って、確かハロルド大佐が使っている火を出したりするやつですよね。
今度作るソーディアンを持つと、その力が使えるとか……」
「本当は誰にでも使えるんだけど、それには純度の高いレンズが必要なわけ。
ソーディアンは人体にある晶力を最大限に引き出させるための、いわば媒体みたいなもんよ。で、あの子はレンズがなくても晶術が使えるのよ」
 シャルティエの言葉に、ハロルドは答えた。
 そのハロルドの発言を頭の中で繰り返し、皆は頭を捻った。
 ――それって、物凄い事なのでは。
「……そういえば、フィアルも晶術を使っていたな。彼女の場合、詠唱もなく自然と使っていたから気にもせず、ただ不思議な力だと思っていただけだったが」
 リトラーは遠い昔を思い出すように、目を瞑って言った。
 ハロルドは頷く。
「フィアルの場合は何年も使い続けてきたから、詠唱もいらなかったんでしょーね。……ともかく、地上に落ちる前に浮いたのも、二十三人の兵士を一瞬で焼き殺したのも、ぜーんぶあの子の持つ晶力ってわけ。DNA鑑定したらそんな結果がでてきたわ」
 そんな晶力を持つ少女も凄いが、この短時間でDNA鑑定までしてみせるハロルドも凄い。
 そう思いつつも、口には出さない上層部の人間。
 リトラーが時計を見て、ため息を吐いた。
「もう1時か。今日はこれくらいにして、皆明日に備えよう。少女がいつ起きるかもわからないことだ」
「司令、あの少女への尋問は牢屋で?」
 イクティノスの問いに、リトラーは首を横に振る。
「病み上がりに寒い牢屋は厳しいものがあるだろう。ここで充分だ」
「了解しました」
 ディムロスは、イクティノスのその言動を見て、いつも機械的だと感じていた。もう少し熱くなれないのか。
 逆にイクティノスは、ディムロスに対して「もう少し冷静になれないのか」といつも思っていることを、ディムロスは知らない。



 次の日、少女が目を覚ましたのは昼前だった。
 少女が目を覚まし、今は会議室にいるということを同室のイクティノスから聞いて、シャルティエは急ぎ足で会議室へと向かった。
 ――本当に、あのフィアルの子供だったら……。
 幼い頃、自分の面倒を見てくれたフィアル。少しの期間だったが、強烈に記憶に焼きついている。自分の名前がクソ長いとか文句を言って、略して「シャル」と呼んでくれた彼女。戦争の中、彼女の笑顔に救われた人間は多いだろう。

 そのフィアルの子供。
 だがフィアルの子供と同時に、今も自分たちを苦しめているミクトランの子供でもある。
 あの時カーレルの腕の中にいた少女の容姿には、フィアルの面影が全くなかったことがその事実を余計に思い知らされる。
 地上軍にとって、吉と出るか凶とでるか。全て、今からの会議で決まる。
 緊張した面持ちで、シャルティエは会議室の前に立った。

 ――どうか、吉でありますように。

 祈りながら、中へと入る。



 暗い。
 シャルティエは第一にそう思った。部屋の明かりは明るいけれど。
 アトワイトの横に座っている少女の顔が、とても暗かった。
 まるで生きている感じがしない。
「……そろったようだな。では、この少女について会議を始める」
 リトラーがそう言ったのを聞いて、シャルティエは慌てて席へと着いた。
「ハロルドから薬品を投与されたようだけど、記憶はあるかい?」
 カーレルに尋ねられ、少女は頷いた。ハロルドは「失礼ねー」とふてくされた表情を見せる。
「まず、名前は何ていうんだ?」
 ディムロスが尋ねると、少女は無表情のまま口を開く。
「……ヴァンク」
 予想してなかった答えに、周りの人間は目を丸くさせた。
 少女は続ける。
「ヴァンクという人、いない? 元は天上にいたっていうヴァンク……」
「私の質問には答えないのか?」
 ディムロスは少し怒りを含めた声で、少女に聞いた。
 少女はディムロスを見据え、機械的な口調で答える。
「私はあなたたちを信じていいのか、わからない。だから、いるならヴァンクっていう人を呼んで。その人の話を聞いて、信用すべきか判断する」
 へー、とハロルドが感心した。
「ちっさいのにバカじゃないみたいね。んじゃ、シャルティエ。遊撃部隊長呼んできなさいよ」
「おい待てハロルド。勝手に……」
「いーじゃない。どっちみち呼んでこなきゃ、この子絶対に答えないわよ」
 ディムロスが制止させようとしたが、ハロルドは反抗。
 リトラーは苦笑しながら頷き、シャルティエにヴァンクを呼んでくるように命じる。
「シャルティエ、ヴァンクを呼んできてくれ。この子の事情を説明してきてくれると、有難いな」
「わかりました」
 シャルティエは立ち上がり、複雑な気持ちに駆られる。
 ――階級がもっと上だったら、こんなパシリをせずに済むのに……。
 そう思いながら、シャルティエは走って会議室を出た。

 数分後、シャルティエは後ろにヴァンクを連れて戻ってきた。
 ヴァンクは「失礼します」と頭を下げ、会議室の中へと入る。
「あなたがヴァンク?」
 少女がヴァンクを見て尋ねた。ヴァンクはを見て頷いた。
 すると、少女はポケットから十字架のネックレスを取り出す。
 それを見たヴァンクは、目を見開いた。
「……マリアに会ったのか!」
 ヴァンクの言葉に、少女は頷いた。
「ヴァンクに渡してって言われた」
 少女はそう言い、ネックレスをヴァンクに手渡す。
 そして再び口を開いた。
「ヴァンク、私はこの人たちを信用して、いい?」
「君が世界を平和にしたいのなら」
 ヴァンクの答えに、少女は目をつむって何かを考えているようだった。ヴァンクの言葉に裏があるかどうか、それを考えているのだろう。
 やがて目を開き、周りの人間を見回し言う。
「あなたたちを信用することにしたわ。……私の名前は
 やっぱり、といった表情で皆は頷く。
「ファミリーネームは~?」
 ハロルドが聞くと、首を横に振った。ない、ということだろう。
「じゃ、あんたのファミリーネームはこれから『』って名乗りなさい。あった方が便利だろうから」
 ハロルドのその提案に、上層部とヴァンクは驚いた。
 ――の母親のファミリーネームをつけるとは、確かにいい考えだな。
 リトラーは内心そう思いつつ、を見る。
 は首をかしげながらも了承したようで、頷いていた。
、君はミクトランの娘なのだろう?」
 リトラーが言うと、は頷いた。
「情報が流れてたの?」
「確かに情報は流れていたが……そうでなくても、君はミクトランに似ている」
 の問いにリトラーは答え、その言葉には目を見開いた。
「父さんを……見たことが?」
「天空都市が完成する前までは、友人だったからな」
 そうだったのか、と他の人間は心の中で呟いた。
 天上軍との大きな戦いの作戦立ての際、「ミクトランの場合だったら」とよく予想して的中させていたのは、それがあってのことかと納得する。
はどうして地上へ来たの?」
 アトワイトが単刀直入に聞いた。
 ディムロスたちがもう少しオブラートに包み、脇から問おうとしてたところを潰した彼女。
「……私は、十年間ひとつの部屋から出たことがなかった。顔馴染み、っていったら父さんぐらいで。食事を運んでくれる人は毎回違ったし。私は何も知らなかった。唯一父さんに尋ねたことがあるのは、お母さんのことくらいで。私のお母さんは、私を生むと同時に死んだって……父さんはお母さんを愛してなかったって……それぐらいしか知らなかった」
 先程からの口調が機械的なのは、そのせいかと皆は納得した。
 生まれてこれまで幽閉されていたのならば、生気が感じられないのもわかる。
「でも……私が天地戦争のことの知るきっかけを作ったのが、ヴァンクの恋人だった。彼女は私に食事を持ってきてくれて、天地戦争のことを教えてくれた。
天地戦争の話を聞いた私は、父さんのやってる事は間違いだって思って……それで、地上に降りてきた」
「ってことは、こっちの味方になるってこと?」
 ハロルドが尋ねると、はコクリと頷いた。
 機械的だが、意志の強い瞳。
 それを見抜いたリトラーは、「わかった」と言って立ち上がる。
。君を地上軍に入れよう」
 そのリトラーの言葉には立っているだけだったが、横のアトワイトが小声で「お辞儀して」とフォローし、は丁寧に頭を下げた。
「そうだな、まずは見習いとして……シャルティエの傍にいたらいい。シャルティエ、の面倒を見てやってくれ」
 ――また、僕か。
 シャルティエは内心そう思いつつも、の面倒を見ることに対しては悪くないな、と思っていた。自分より下の階級の人が常に傍にいる、というだけで楽になれる。
「どうせなら部屋も同室にしようか」
 リトラーの発言に、シャルティエとイクティノスは目を見開いた。
「司令、何故わざわざ二人いる私たちの部屋に……」
「一人ならともかく、男二人というのは少しむさ苦しい感じがしてな。いや、君たちがではなく私たちが。そこにを入れることによって、だいぶ印象が変わるだろう?」
 そんな身勝手な。
 イクティノスとシャルティエはそうは思ったが、司令官に口答えすることも出来ずに黙って了承。
 ふと、イクティノスが「そういえば」と口に出す。
が地上に降りてから、ベルクラントからの攻撃がありませんね。もちろん、一概に関係があるとは言えませんが……」
「あ、止まったんだ……」
 イクティノスの言葉に、は思わず呟いた。
 その場にいる人間に「ん?」という顔をされたので、は慌てて言う。
「えっと……ベルクラントの攻撃が続いてるっていうから……私が地上に降りたら止まるかなって。そういう考えも、あったわけ」
「チャレンジャーねぇ~! その根性、気に入ったわ」
 ハロルドに言われて、は悪い気はしなかった。気に入られて嬉しい、ただそれだけの感情なのだが、はその感情をまだ知らない。
「ところで剣を持っているようだが、扱えるのか?」
 ディムロスに尋ねられ、は首を横に振る。そして「咄嗟に取ってきただけだから」と言った。
「そりゃアンタ、生まれてずっと幽閉されてきたんだから出来ることなんて限られてるでしょーよ」
 ハロルドにからかわれるように言われて、ディムロスは少しだけハロルドを睨む。あまり大袈裟に睨んだら仕返しが怖いのでやらないが。
「ま、私が簡単に説明してあげるわ。あんた賢そうだから、簡単でもそれなりにわかるっしょ」
 ハロルドはそう言い、に説明をし始めた。
 この場にいる人間の紹介。地上軍の階級、主要部隊、構成。そして晶術のこと。
 彼女の言うとおり、説明はとても簡単なものだったが、は理解したようだった。
「とりあえず、先に剣術を磨いてみたら? 晶力はあるってことはわかってるから、いつでも訓練できるしね」
「ご苦労だった、ハロルド君。それじゃあ、に剣術を教えるのはシャルティエがメインとなって、ディムロスとヴァンクが補助してやってくれ」
 シャルティエとディムロスとヴァンクは、頷いて了承した。
「リトラー司令、私は今から任務があるので……失礼させてもらってよろしいでしょうか」
「ああ、呼び出してすまなかったな。任務、頑張ってくれ」
 ヴァンクがリトラーに尋ね、リトラーは了承する。
 はヴァンクに聞きたいことが山ほどあったが、またの機会ということで諦めた。
 ヴァンクが出て行ったところで、アトワイトがに問いかける。
「その服装で基地を歩くのは、ちょっと目立つわね。シャルティエ少佐についてまわるのは後にして、先に着替えない?」
 その問いに、は頷いた。このひらひらのスカートで剣を扱うのは辛い、と思っていたところだった。
「僕はここで待ってるよ。また後でね」
 シャルティエがにそう言うと、は無表情で頷き、アトワイトと共に会議室を出て行った。

 はあ、とため息をついたのは、そのシャルティエだった。
「どうした、シャルティエ。気になることでも?」
 ディムロスが気遣って声をかけると、シャルティエは曖昧に笑った。
「僕が面倒見切れるのかなって……。なんというか、機械的で。どう接すればいいのか」
「お主がそんなんでどうするんじゃ。あの子は全く新しい環境で戸惑っておるというのに……もっとシャキっとせんか!」
 クレメンテに喝を入れられ、シャルティエは首をすくめた。
 リトラーが苦笑する。
「まあシャルティエの言ってることは間違いではないな。は確かに機械的で、まるで感情を知らない。……だが、天地戦争の話を聞いて、世界を平和にしようと地上に降りてきたのを見ると、根はとても優しくて情のある子なんだろう。そのうち変わってくるはずだ」
「笑ったら可愛いだろうね」
「やーね兄貴。今の発言でここにいる皆が兄貴がロリコンだって思ったわよ。怖いから言わないだけだろうけど」
 全く持ってハロルドの言うとおりだ。
 その思いを皆は表情に出してしまい、それに気づいたカーレルは周りの人間に黒い笑みを向けた。
 室内温度が急激に下がったような気がする。



 着替えが終わったは、会議室へと向かっていた。アトワイトは、急患がやってきたのでそちらの手当てをしている。
 ロングブーツを鳴らし背中にレイピアを背負って歩いていたが、ふと足を止めた。
 打倒ミクトラン。
 道中、そう叫んでいた兵士がいたことを、は思い出す。
 ――打倒、ミクトラン……。
 心で同じことを呟く。地上軍にいる為には、世界を平和にする為には……
 ――この考えを、捨てちゃいけない……。
 ――父さんは憎むべき敵だから。倒さなくちゃいけない敵だから。
 ――大嫌いな、敵。
 自分は、そう思わなくてはいけない。
 今のには、他に思う術がなかった。しかしその術は、心の奥が抉られるように痛かった。

 その痛みから逃げるように、は再び会議室へと向かった。



「えーッ! もっとフリフリでヒラヒラでギラギラしたヤツの方がカワイーのにぃ!」
「お前の趣味に合わせたら大変なことになる!」
 が会議室に入った瞬間ハロルドが文句をつけ、ディムロスが青筋を立てて突っ込んだ。
 驚いたが目を白黒とさせていると、カーレルが穏やかな口調で微笑みながら言う。
「よく似合ってるね。可愛いよ」
 うわぁ。
 口には出さず、周りの人間は心の中でそう呟いた。『ロリコン』という四文字を出そうものなら、確実に殺られる。たとえ事実でも。
「司令も人が悪い。頼むならシャルティエではなく、私に面倒を見させれば良かったのに」
 ――カーレル君に頼まなくて、正解だったな。
 リトラーは心の中で、自分は間違っていなかったと確信した。
「それじゃあ、行こうか」
 シャルティエは立ち上がり、まだ寒さに慣れていないに壁にかかってあるコートを渡してやった。
 は少し戸惑いながらも、コートを着てシャルティエを見上げた。
「行こう」
 にこりと笑い、シャルティエはの背中に手を添えながら会議室を出て行った。
 それを見ていた周りの人間は、フゥ……と息を吐く。
「……リトラー司令。考えましたね」
 イクティノスにそう言われ、リトラーは笑みを浮かべる。
「シャルティエのコンプレックスがマシになればと思ってな。
歳も一番若い。階級も一番低い。プレッシャーになるのもわかる。前々からどうにかしようとは思ってはいたが……そこにが来たから、調度良いと思って」
「なかなか気が合いそうじゃな、あの二人」
 リトラーの言葉に同調するように、クレメンテが言った。
「恋愛に発展する確率3%。パートナーになる確率5%。良き友となる確率82%。その他諸々ってところね」
「恋愛は無理だろうね。私が取るから」
「兄貴の場合は0.02%。追っかけすぎて逃げられる確率75.3%」
「私だって軍師だからね。狙って敵は必ず仕留めるよ」
 なんて物騒な話を。
 の身を案じた上層部だった。



 初めて外に出た時と比べて、体の辛さも寒さもだいぶ楽だな、とは思った。
 そして寒さによって出る白い息を見て、本当に外に出てきたんだと改めて実感する。
「体はもう大丈夫?」
 隣にいるシャルティエに問われ、は頷いた。
「……良かった。だいぶ衰弱してたみたいだから」
 そのシャルティエの言葉に対し、は全く反応を示さなかった。
 全く続かない会話に、シャルティエは泣きたくなった。
 もういっそ黙っておこうかと思い出した頃、半歩後ろを歩いていたが歩みを止めたので、シャルティエも立ち止まってを見た。
 はシャルティエを見上げ、尋ねた。
「何て、呼べばいい?」
「え? ……あ、名前のこと?」
 シャルティエが尋ね返すと、は頷いた。
「好きに呼んでくれていいよ」
 笑いかけながら答えると、はしばらく考える様子を見せてやがて口を開いた。
「…………シャル」
 シャルティエは、ドキリとした。予想していなかったわけではない。心のどこかでそう呼んでくれることを期待していた。まさか、本当にそう呼んでくれるとは思っていなかったが。
 返事がないことに首をかしげたを見て、シャルティエは慌てて頷いた。
「うん、それで良いよ」
 シャルティエが了承すると、は無表情のまま再び足を動かした。
 訓練所は、もう見えていた。



「じゃ、先に見学でもする?」
 シャルティエの問いに、は頷く。
 拓けた場所で雪が降る中、大勢の兵士が訓練をしていた。
 人形相手に練習をしていたり、人同士で練習をしていたり、様々だった。
 はそのまま十分程見続けたかと思うと、背負っているレイピアを、鞘から抜いた。
「シャル」
「え、もういいの?」
 は頷き、構えた。
 シャルティエは少し戸惑ったが「習うより慣れろ」という言葉を思い出し、剣を構える。
「どこからでもかかって来ていいよ」
 シャルティエは笑顔を見せながらそう言った。
 それとほぼ同時に、は地面を蹴ってシャルティエに向かって走りこむ。
 シャルティエは死角を狙ったの攻撃に驚きながらも、その攻撃をたやすく受け止めた。の動きは素早さは無いものの、無駄がない。そして攻撃はどれも、隙を狙ったものだった。
(これは……下手な兵士より強い)
 武器を一度も握ったこともない少女がたった十分間訓練所を見学しただけで、こうも強くなれるのか。とても信じられなかった。
 もし本当であるのならば、の集中力、洞察力、想像力はとても優れているのだろう。
 だが、の戦い方にある一つの欠点をシャルティエは見つけ、そこを攻める。
 シャルティエはの刃を、力の限り叩き弾いた。
 キィン、と音を立てて、のレイピアは宙を舞い、地面へと刺さった。
 は呆然と武器を失くした手を見つめた。
 そんなの様子が面白くて、シャルティエは思わず噴出した。
 シャルティエに、その呆然とした顔を向ける
の弱点、わかった?」
 そのシャルティエの言葉に、は腕を組んでしばらく考える。
 五秒も経たない内に、少女の口から答えは出てきた。
「私は力が弱いから、力勝負したら弾かれる」
 その答えを聞きながらシャルティエは自分の武器を鞘に納め、レイピアを地面から抜いてに手渡してやった。
「うん。はここにいる兵士と違って非力だから、同じように武器を振るったら弾かれちゃうんだ」
 シャルティエはの傍らに膝をつき、手をの頭の上に置いて笑顔で言う。
「でもは他の部分がずば抜けて優れてるから、独特の戦い方を生み出す事で力の部分は補えるよ。だから大丈夫」
「……うん」
 力強い瞳で、は頷いた。
 その眼差しが一瞬、の母親とかぶってシャルティエはドキリとした。
 ――やっぱり、フィアルの子なんだ……。
 この少女の面倒を見るように、フィアルも自分の面倒を見てくれた。
 運命って不思議だな、とシャルティエは感じた。



「ピエール少佐ー!」
 一時間程シャルティエがに剣術の指南をしていると、一人の兵士がシャルティエのもとへと駆け寄ってきた。
 シャルティエは一度の指導を止め、その兵士の方へと体を向ける。
「どうかした?」
「今度の作戦について、今から最終確認を取りたいと思っています。少佐も第三会議室へいらしてください」
「わかった。すぐに行く」
 シャルティエの部下らしき人物はをちらりと見て不思議そうな顔をしたが、すぐに敬礼をしてその場を立ち去った。
 シャルティエはの方へと向き直る。
「最終確認だから、あまり時間はかからないと思うけど……ラディスロウに戻る?」
「……もう少し、ここを見ときたい」
 は武器を鞘に直し、シャルティエの問いに答えた。シャルティエは「そっか」と言いながら苦笑する。
「じゃあまた、ここに迎えに来るよ。出来るだけ早く戻ってくるから」
 その言葉に、は頷いた。
 シャルティエの後姿を少しだけ見送り、は再び兵士の訓練光景を見学し始めた。

「お父さん、どこー!」
 訓練所の隅の方で聞こえた女の子の大きな声に、は思わずそちらへ目を向けた。
 その女の子はよりも年下で、五歳ぐらいの子だった。汚れたぬいぐるみを胸に抱きしめ、目に涙を溜めてしゃくり上げていた。
 がその女の子をずっと見ていると、女の子は視線に気付いて急いだようにの方へと走り寄ってきた。
「……なんだあ、お人形さんかと思ったのに」
「…………」
 女の子の言葉に、は沈黙した。
 自分より小さい存在を、は見た事がなかった。
 よって扱いあぐねていると、訓練が終わったと思われる一人の兵士が二人のもとへと歩み寄ってきた。
「なんだ、迷子かあ?」
「違うもん! お父さんを探しにきたんだもん!」
 兵士の言葉に、女の子は反論。
 兵士はため息を吐いて、二人の頭に手を置いた。
「迷子だな。民間から来たのか?」
「だから違うのぉ!」
「私は……」
 迷子と思われているのは女の子だけではなく、もらしい。
 女の子は相変らず否定していて、もすかさず否定しようとしたが兵士の次の言葉に掻き消された。
「仕方ない。民間の方まで連れてってやるか」



「ねえねえ、お姉ちゃんにはお父さんっている?」
 何も言えないまま、は兵士に連行されていた。
 その道中に女の子から問われ、は頷いた。
「お姉ちゃんのお父さんも、軍人さん?」
「え……」
 その次の問いに、は戸惑った。
「そうなの、かな……」
「あたし、お父さん大好き! 将来はお父さんのお嫁さんになるんだ♪」
 の濁した答えには反応は示さず、女の子は将来の夢を語った。
 そんな女の子を見て、は複雑な気持ちを抱いた。その気持ちが表情に出たのか、女の子が首を傾げて再び尋ねてきた。
「お姉ちゃんは……お父さん、キライなの?」
 その質問に、はドキリとした。
 地上軍に入ったからには、キライだと言わなければならないだろう。
「…………キライ」
「嘘だあ」
 腹の底から搾り出した言葉を、女の子は容易く切った。
「嘘じゃない」
 ――そう、嘘じゃない。
 連行してくれている兵士の背中を見ながら、はきっぱりとした声色で言った。女の子は、納得がいかないような顔をして首を傾げる。
「じゃあ、どうしてそんな悲しそうに言うの?」
「…………!」
 女の子の言葉に、は息を呑んだ。
 ――悲しそう?
 声色は、そうでもなかったはず。表情にも出してないはずだった。
 心の中では、どうだったんだろう。
「おーい。この子たちの保護者はいるかー? 訓練所まで迷い込んできていたぞ」
 気が付いたら、大きな建物の中へと入っていた。
 大きいと言っても、中にいる人間の数を考えれば小さいと感じられる。
 テントの中は怪我に苦しむ声や、赤ん坊の泣き声で静かだとは言えなかった。
 民間人は部屋の真ん中にある焚き木の周りに集まっていたが、兵士の声を聞いて視線をそちらへと向けた。
 一人の年配の母親が、慌てて立ち上がった。
「あんたって子は! さっきから姿が見えないと思ってたら……!」
 母親は女の子のもとへやって来て、手首を掴んで先程までいた場所に戻ろうとした。
「お父さん探してたの」
 だが、その女の子の言葉に母親は足を止める。
 そして女の子を振り返った。その顔は、とても悲しそうだった。
 母親はしゃがみ込んで、女の子の手を握り締めた。
「……お父さんはね、死んだのよ」
 言い聞かせるように、母親はゆっくりと言った。それは、自分自身にも言い聞かせているようにも見えた。
 女の子は、首を横に振る。
「うそぉ! お父さんいるもん! 昨日の朝、いたもん……!」
「隣にいるお兄さんが教えてくれただろ? ほら、あそこにいる……」
 母親は、視線を片足に包帯をしている青年へと目を向けた。女の子もつられて、その青年へと視線を移した。
 その青年は顔を真っ青にさせながら、を見て震えていた。
「ばッ……バケモノ……!」
 青年の言葉に、その場にいた人間は一斉にを見た。
「こいつだ……こいつがダイクロフトから降りてきたバケモノだッ……!」
 を見る目が、恐怖に変わる。
 ここまで連れて来てくれた兵士までもが、と距離を取った。
 片足を怪我している青年は、続けて言う。
「この子の父親を殺して、俺の足をこんなのにしたッ……バケモノだッ……!」
「あ……」
 攻撃を仕掛けてきた兵士。
 訳も分からぬまま、恐怖を覚えた。
 そして、鼻につく肉が焦げた異臭。
 その一つひとつが、の頭の中で甦った。
「あんたが……あんたが、あの人を殺したのかい……?」
「わ、私は……」
 は母親に尋ねられたが、俯いて口ごもった。母親のを見る目が、疑いから憎悪に変わったのがわかる。
 兵士が何かを思い出したかのように、声を搾り出した。
「まさか……嘘だろ……。ミクトランの娘が地上軍に入ったっていう噂が流れてたが……まさか、お前なのか?」
 情報とは一体どこから流れるものなのか。
 兵士の言葉に、は思わず顔を上げた。
 その行動が肯定しているように見えたのだろう。民間人たちの顔が恐怖で引きつった。
「なんだ、それ……。地上軍に入ったふりして、実は俺たち全員を殺そうってわけじゃ」
「違う。私は、そんな……」
 民間人の男の発言に、はすかさず首を横に振った。
 母親が、の前に立つ。
「返して……返してよ、あの人を! この子の言う通り、昨日の朝はここにいたのよ!?」
 肩を掴まれ激しく揺さぶられ、は戸惑う。
 は、重々しく口を開いた。
「……天上の技術だったら、返すことができるけど……」
「!」
 乾いた音が、建物の中で響いた。
 母親がの頬を思い切り、引っ叩いたのだった。
 は頬を手で押さえ、涙を浮かべた母親を見上げる。
「よくも、そんなことが言えたもんだねッ……! あんたがミクトランの娘だってことが、よくわかったよ。あんたは、命ってもんが何かわかってない!」
 ――命がなくなったら、人は死ぬんでしょ。
 は心の中で、そう呟いた。
 口に出しても良かったが、今下手に口出しすると状況を悪化させるような気がしたから。
 女の子が近くにあった置石を拾い、へと投げた。
「ッ」
 からは死角だった為、避けることが出来ずに石が額にあたった。
 額からは、血が一本筋になって流れる。
「お姉ちゃんが……あたしのお父さん、取ったんだあ……!」
 悲痛そうに顔を歪め、女の子は泣きじゃくりながらに言った。
 は流れた血を、手で拭う。
 民間人は、次々に置石を手に取った。
 は思わず後ずさりをする。
「おい、止めろ!」
 すると、怪我をした青年が制止の声をかけた。
 民間人の石を投げようとした手が止まったことに、はホッとする。
「下手に刺激をすると、殺されるぞ」
「…………ッ!」
 だが、その青年の言葉は優しいものではなく。
 は息を呑んで更に一歩、後退した。
 民間人の視線は、恐怖に染まっていて。そして怒りに燃えていた。
 迫ってくる気迫から逃れるように、は建物を飛び出した。
 赤ん坊の泣き声だけが、やたらと耳に残っていて。はフードをかぶって訓練所まで戻ろうと走る。

 そして、途中で足を止めて空を見上げた。

 少しだけ、後悔が生まれる。
 こんな気持ちを抱くことになるのなら、地上に来なかった方がいいのではないか。

 ――ここに、私にとっての幸せが本当にあるの?

あとがき
本当に長編本編と比べ、ギャグとシリアスの割合が真逆になったような感じですが(笑
夢主は基本的に自分を抑えて周りに適応する子ですから、ここで陛下に対する偽の憎しみを作っちゃうわけです。
そんな彼女も後から変わっていくわけですが……TOD本編で色々と学び。それをTOD2本編で生かし。
私がいつも書くような阿呆みたいな夢は、後半の方でやっと出てくると思います。
とりあえず、この人形夢主に色々な感情を植えつけないといけませんしね!(笑
それでは、ここまで読んで下さった方有難う御座いました!
2006/12/14
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