いつの間にか



「顔がいい男に弱いってホント?」
「わあああ!!」
 突然その偏差値の高い顔面を近づけて尋ねてくるワジに、は叫びながら距離を取った。
「人を化け物みたいに……やれやれ、今夜僕は枕をびしょびしょにしながら眠るだろうね」
「弱いって絶対わかっててやってるでしょ!?」
「まあ、僕の顔に弱いことは知ってたけど。まさか顔がいい男全般に弱いとは思ってなかったかな」
「弱いって言ったって、別にほいほいついて行ったりしないんだからね。……日曜学校とかで、宿題頼まれたりしたら代わりにやってただけで……」
「貢ぐタイプだね。うかうかしてたら他の男にさらわれそうで恐ろしいよ」
「絶対思ってないでしょ……ワジ、自分の顔に自信あるじゃん」
「まあね、僕の顔を見慣れておけば目移りしないでしょ」
「……」
 そういえばワジと出会ってから、誰かを「あの人かっこいいな」と思うことがなくなってたな、とは今更ながら気付くのだった。
2020/5/12