気になる視線
マックスはよく、わたしのことをこっそり見つめてくる。
信じられないくらい、優しい目で。
わたしが料理をつくっているとき、飲み物を入れているとき。本を読んでいたかと思えば、盗み見るようにそんな目でわたしを見る。気づいたわたしがマックスを見たら、マックスはまた本に目を移す。
これが野生の中だったら、獲物として狙われてるのかと警戒してるところだけど、マックスのことだから多分違う。
ほら、今も。洗濯物を畳んでるわたしの後ろ姿を見てる。
「マックス、わたしのこと見てるでしょ。何考えてるの?」
背後から、少し動揺した空気が伝わってきた。多分、わたしが気づいてるって知らなかったんだと思う。
「参ったな……」
申し訳無さそうな声が、後ろから聞こえた。こっそり見てたくらいでそんなバツ悪くしなくてもいいのに。洗濯物を畳む手を止めて、わたしはソファにいるマックスの隣に座った。
「すごく優しい目で見てくるから。ちょっと気になってたの」
「……可愛いお嫁さんを貰えて幸せだな、と」
マックスの目を見つめる。それだけじゃないことはわかってる。そう目で訴えれば、マックスは観念したように肩を落とした。
「……が猫だったら、どんな猫だろう、と……」
猫好きマックス。ついにわたしを猫にする妄想をし始めた。
今度オリビエに手紙を送るときは、このことを書こう。何か面白いことを考えてくれるかもしれない。
「マックス」
わたしの大好きなひと。
ぺろっと、マックスの唇を舐める。驚いた顔をしているマックスに、わたしは言う。
「わたしが猫だったら、こうすると思う」
言うと、マックスは堪えきれないようにわたしを抱きしめた。